B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)の治療薬キムリアについて

 

 

再発性や難治性のB細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)の治療薬であるキムリアという薬があります。

 

キムリアと聞いて、「そんな薬聞いたことない。」と思った人もいると思います。

 

キムリアは、すべての病院で使用できるわけではないため、取り扱ったことのないという薬剤師が多いのが実際のところではないでしょうか。

 

ただ、キムリアのメカニズムや副作用、治療法、コストなどについては、薬剤師として知っておくべき内容です。

 

今回は、キムリアについて詳しく見ていきます。

 

キムリアとは

 

キムリアは、再発性または難治性のB細胞急性リンパ芽球性白血病の治療に使われる薬です。

 

患者さんの免疫細胞であるT細胞を取り出して、がん細胞へ攻撃力を高め、死滅させます。

 

キムリアによる治療は、CAR-T療法と呼ばれていますが、CAR-T療法は、がん免疫療法として有効性が期待されている反面、重篤な副作用が起こる可能性もありますので、患者さんへの説明がとても重要です。

 

また、治療の流れも決まっていますので、薬のことだけでなく治療の順序もチェックしておく必要があります。

 

キムリアの効能・効果

 

キムリアの効能・効果は、添付文書によると、

 

1 . 再発又は難治性のCD19陽性のB細胞性急性リンパ芽球性 白血病。ただし、以下のいずれかの場合に限る。

  • 初発の患者では標準的な化学療法を2 回以上施行したが寛解が得られない場合 • 再発の患者では化学療法を1 回以上施行したが寛解が得られない場合
  • 同種造血幹細胞移植の適応とならない又は同種造血幹細胞移植後に再発した場合

2 . 再発又は難治性のCD19陽性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫。ただし、以下のいずれかの場合であって、自家造血幹細胞移植の適応とならない又は自家造血幹細胞移植後に再発した患者に限る。

  • 初発の患者では化学療法を 2 回以上、再発の患者では再発後に化学療法を1 回以上施行し、化学療法により完全奏効が得られなかった又は完全奏効が得られたが再発した場合
  • 濾胞性リンパ腫が形質転換した患者では通算2 回以上の化学療法を施行し、形質転換後には化学療法を1 回以上 施行したが、形質転換後の化学療法により完全奏効が得られなかった又は完全奏効が得られたが再発した場合

 

となっています。

 

投与条件が細かく決められているので確認しておくことが必要です。

 

キムリアの重大な副作用

 

先ほど、キムリアに重篤な副作用があることはお伝えしましたが、具体的にどのような副作用や注意点があるのかを見ていきましょう。

 

〇サイトカイン放出症候群(CRS)(77%、58%)

 

キムリアはCARーT細胞などの免疫細胞の働きを活発化させ、サイトカインを放出させてがん細胞への攻撃を強めます。

 

しかし、このサイトカインが正常な細胞まで攻撃してしまい、全身の炎症を引き起こしてしまう恐れがあるのです。

 

これをサイトカイン放出症候群と言います。

 

あらわれることが予想される症状として、高熱、悪寒、 筋肉痛、関節痛、悪心、嘔吐、下痢、発汗、発疹、食欲不 振、疲労、頭痛、低血圧、脳症、呼吸困難、頻呼吸、低酸 素症、臓器障害(一過性の心不全及び不整脈、腎不全、 AST増加、ALT増加、ビリルビン増加を含む)などがあります。

 

患者さんの状態を十分に観察し、適宜、血液検査等を実施することが必要です。

 

重度のサイトカイン放出症候群があらわれた場合には、集中治療室で、製造販売業者が提供するサイトカイン放出症候群管理アルゴリズム等に従い、適切な処置を行うことになります。

 

また、サイトカイン放出症候群を発現した患者さんで播種性血管内凝固症候群、毛細血管漏出症候群、血球貪食症候群、マクロファージ活性化症候群も報告されているということも知っておいてください。

 

〇神経系事象(21%、12%)

 

キムリアの投与後に、脳や神経、精神に不調が起こることがあります。

 

この症状は、サイトカイン放出症候群と同時に起こることもありますし、サイトカイン放出症候群が治まった時に起こることもあります。また、サイトカイン放出症候群があらわれずに神経系事象だけ起こることもあり得ます。

 

あらわれることが予想される症状として、頭痛、せん妄、不安、浮動性めまい、振戦等の症状が挙げられます。

 

通常は、キムリアの投与後約一週間の間に起こり、一週間程度で収まりますが、適切な検査・治療が必要です。

 

〇感染症(28%、15%)・低γグロブリン血症(39%、12%)好中球減少症(53%、24%)、白血球減少症(55%、21%)、リンパ球減少症(43%、28%)、血小板減少症(41%、41%) 及び貧血(12%、14%)

 

キムリアの投与後に、好中球や白血球、リンパ球などの免疫細胞や血小板などの血球成分が減少します。

 

その状態がキムリア投与後4週間以内に回復せず、B細胞が不足した状態が続いたり、免疫グロブリンが作れなくなると感染症を引き起こしやすくなります。

 

感染症は、細菌、真菌、あるいはウイルス等による重度の症状(敗血症、肺炎等)があらわれることがあり、死亡に至った例も報告されているそうです。

 

また、発熱性好中球減少症があらわれることがあり、B型又は C型肝炎ウイルスキャリアの患者又は既往感染者、HIV感染者において、ウイルスの再活性化又は増加による悪化があらわれる可能性もあります。

 

患者さんの状態を十分に観察し、異常が認められた場合には、抗生物質の投与等の適切な処置 を行うことが必要です。

 

〇腫瘍崩壊症候群( 4 %、 1 %)

 

キムリア治療後に腫瘍が急激に死滅した結果、破壊された腫瘍細胞の成分が結晶中に放出され体内の尿酸値やカリウム、リン、カルシウムなどの数値が異常をきたす場合があり、これを腫瘍崩壊症候群と呼びます。

 

血清中電解質濃度の測定及び腎機能検査を行うなど、患者の状態を十分に観察することが必要です。

 

あらわれることが予想される症状としては、尿の減少、浮腫、呼吸困難、頭痛、痙攣、意識障害、吐き気、不整脈などが挙げられます。

 

このような症状が認められた場合には、適切な処置として生理食塩水、高尿酸血 症治療剤等の投与、透析等を行うとともに、症状が回復するまで患者の状態を十分に観察しなければなりません。

 

キムリアのメカニズム

 

キムリアは、患者さんから取り出したT細胞にCD19キメラ抗原受容体(CAR)をコードする遺伝子を導入し作った『CAR発現生T細胞』が構成細胞となります。

 

『CAR発現生T細胞』を含むキムリアは、白血病に出ているCD19を認識すると、増殖、活性化、標的細胞に対する攻撃及び細胞の持続・残存に関する信号を伝達します。

 

これらの作用により、B細胞性急性リンパ芽球性白血病及 びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫といったB細胞性腫瘍に対し抗腫瘍効果を示すと考えられています。

 

簡単に言うと、T細胞を強力化することで白血病を攻撃する薬ということです。

 

キムリアの治療を受ける前に

 

メカニズムのところで少しお話ししましたが、キムリアの治療を受ける前には患者さん自身のT細胞を取り出す必要があります。

 

これは、白血球アフェレーシスと言いますが、アフェレーシスは、特別な装置を使用して血液を体の外に取り出し、白血球を採取した後、血液を再び体内に戻す方法です。

 

アフェレーシス後、採取された患者さん自身の白血球の中からT細胞を取り出し、『CAR発現生T細胞』を含むキムリアを作ります。

 

白血球アフェレーシスにはおよそ2〜4 時間かかり、キムリアが製造され病院に届くまで最短で5~6週間程度かかります。

 

かなりの時間がかかることに驚いた人も多いのではないでしょうか。

 

この間に、病状が悪化したり進行したりすることがあり、状況によってはキムリアの治療を受けられないこともあるので、患者さんへの説明がとても重要になります。

 

キムリアの投与前には数日間の化学療法を行いますが、これはキムリアのがん細胞への攻撃が効果的に行われるように体内のリンパ球を減らすためです。

 

患者さんによっては、その前に病状を安定させるための別の化学療法が行われる場合もありますので、このことも頭に入れておいてください。

 

キムリアの治療の流れ

 

キムリアの治療をまとめると、

 

1)キムリアの治療についての説明をする

2)白血球アフェレーシスで白血球を取り出し、T細胞から『CAR発現生T細胞』を含むキムリアを製造する

3)3~4日程度かけて、キムリアの投与の準備のための化学療法を行う

4)キムリアを投与する

 

という流れになります。

 

一般的な薬のようにすぐに投与して経過を見るものではないので、この流れも覚えておいてください。

 

キムリアの治療はどこで受けられますか?

 

キムリアの治療は、特定の病院でのみしか受けることができません。

 

治療提供可能施設は、このサイトから見られますので一度チェックしておいてください。

 

https://drs-net.novartis.co.jp/dr/products/product/kymriah/medical_institution/

 

ちなみに上の情報は医療従事者向けの情報で、問い合わせは医師のみしかできないことになっています。

 

キムリアの価格は高い!自己負担はいくら?

 

ここまで紹介してきたキムリアですが、実はこの薬の価格はとても高いことでも有名です。

 

販売価格は約3349万円とすることが、中央社会保険医療協議会で了承されました。

「こんなに高額なら払えない。」「3割で負担しても1000万円を超えるなんて誰が払えるの!?」と思った人も多いと思います。

 

たしかに、このような高額なら治療を受けられない人がほとんどなのではと思いますよね。

 

しかし、一般的に自己負担は、かかった医療費の3割なのですが、高額な医療や薬に関しては、高額療養費制度というものがあります。

 

この制度は収入に比例して、患者の負担の上限を月ごとに定める制度です。

 

例えば70歳未満で年収が約370万円から770万円の方がキムリアを使った場合には、自己負担額は約40万円で済み、残りの約3300万円は公的保険から給付されることになるそうです。

 

40万円も高額ですが、1000万円からはかなり下がったイメージだと思います。

 

とにかくこの薬を本当に必要な患者さんが、経済的な問題であきらめなければいけないことだけは避けてほしいです。

 

まとめ

 

今回は、キムリアについて作用や副作用、治療の流れや価格の問題などを見てきました。

 

キムリアの詳細があまり分からなかった人も、大まかな概要をつかめたのではないでしょうか。

 

このような重篤な副作用を持つ薬を投与するとき、患者さんは不安でいっぱいになります。

 

ただでさえ病気と闘わなければならないのに、その上薬のことまで心配しなければいけないことを考えると本当に胸が痛くなりますよね。

 

患者さんの不安をすべて取り去ることはできませんが、薬剤師が患者さんの気持ちを理解し、誠意を持って説明をしたり、患者さんの疑問点に応えたりしていくことで患者さんの不安感は軽減されると思います。

 

今後キムリアを取り扱う可能性のある薬剤師は、この機会にキムリアについてもう一度勉強してみてください。

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