医療刑務所で働く薬剤師ってやっぱり危険?求人や仕事内容・スキルを薬剤師が解説。
刑務所で働いている薬剤師がいることを知っているでしょうか?
刑務所の薬剤師求人を見たことのある人が少ないというのが正直なところで、そこで働く薬剤師の存在なんて聞いたこともない人がほとんどだと思います。
しかし、刑務所に勤務している薬剤師は実際に存在しています。
刑務所で働くと聞くと、たいていの人は「危険で怖い仕事なのではないか」という第一印象を持ってしまいますよね。
閉鎖された空間の中での仕事とあって、分からないことが多いため、イメージだけが一人歩きしがちです。
また、そのイメージのせいでたとえ求人を見つけたとしても応募を避けてしまうケースも多いかもしれません。
今回は、刑務所で働く薬剤師が実際にどのような仕事をしているのかや、世間で思われているような危険があるのかなどその実態を詳しく見ていきます。
Contents
刑務所での薬剤師の仕事内容とは?怖い思いをするの?
「刑務所で働くということは、薬物中毒の人などに関わる仕事なのでは?」と想像する人が多いと思いますが、実際の業務内容は普通の調剤薬局で働く薬剤師と同じで、調剤業務が主な仕事です。
特別な場所だけに業務内容も特別だと思っていた人は、少し驚いたかもしれませんが、刑務所ならではの業務は特にないため、今までの調剤経験や知識を生かせる職場と言えます。
しかし、業務内容が変わらないと分かったからといって、安心して就職を希望できるかというとそうではなく、多くの人は、刑務所という場所柄が原因で働くことをためらってしまうのではないでしょうか。
多分薬剤師が一番心配する部分は、服薬指導に対応しなければいけない人が一般の患者様ではなく『受刑者』という部分だと思います。
暴言や暴力を受けたり、精神的に怖い思いをしたりするのではないかと当然心配になりますよね。
実際にそのようなことが刑務所で働くことを薬剤師に躊躇させてしまうこともめずらしくないのですが、実は刑務所で働いている薬剤師が受刑者と直接話すことは基本的にはありませんので、恐怖を感じることはないと思ってください。
医師の処方により調剤をするだけで、服薬する人とコミュニケーションをとることはないため、一般的に心配されている要素は全くないのです。
この事実を聞いて危険ではないと分かると「刑務所で働いても良いかも」と思う薬剤師もいるのではないでしょうか?
刑務所で働くメリットはあるの?
「調剤薬局と同じ業務内容ならわざわざ刑務所で働かなくても・・・」という意見もあるかもしれませんが、刑務所で働く薬剤師には調剤薬局にはない利点もいくつかあります。
①国家公務員であるという利点
刑務所で働く薬剤師は国家公務員ですので、給与や福利厚生は国家公務員としてのものになります。
公務員は昇給やボーナスが安定していることや退職金も恵まれていることがよく知られていますが、それだけではなく国家公務員しか利用できない保養所を使えるなど公務員であるだけでさまざまなメリットがあります。
そのほか、景気の善し悪しで解雇をされることがないことも大きな利点の一つと言えます。
民間で働いているとこのようなメリットを感じるあまりありませんから、公務員になって待遇の良いところで働いてみたいと思う人もかなりいるのではないでしょうか。
実際に「刑務所で働くのは気が引けるけど、国家公務員として働けるのならぜひ勤務してみたい」という薬剤師も多いほど、国家公務員として働けることは刑務所で働くことの大きな利点になっています。
②時間的に余裕が持てるという利点
たとえば病院に勤務していると、当直や夜診療のための業務がありますし、調剤薬局でも門前のクリニックの診療が終わるまでは勤務が続くなど、薬剤師業務には残業がつきものです。
これに対して刑務所な薬剤師業務はたいてい5時で終了ですので残業がありませんし、土日や祭日は基本的にオフになります。
医療機関は普段、一般の人がお休みの時にも勤務しなければならないのが普通ですから、残業なしで一般のサラリーマンと同じように休めるのはとても恵まれていると言えるのではないでしょうか?
通常の薬局ですと土曜日が一番混んで業務がごった返したりしますので、そんな思いをしなくてもいい薬剤師の仕事なんてうらやましいかぎりと思う人もいますよね。
残業代を稼ぎたい薬剤師には物足りないと感じてしまうかもしれませんが、自分の時間や家族との時間を大切にしたい人にとってはうってつけの仕事かもしれませんよ。
刑務所の薬剤師はどうやってなるの?求人は?
先ほどご紹介したように刑務所で働く薬剤師は国家公務員ですので、そこで働くためにはまず国家公務員試験に合格することが必要です。
国家公務員試験は難易度が非常に高く、そう簡単には受からないと一般的には言われていますから、刑務所で働く薬剤師になるには、かなりの努力をしなければいけないということになります。
「薬剤師国家試験の勉強も大変だったのに、国家公務員試験の勉強までしなければいけないなんて辛い」という薬剤師もきっと中にはいるのではないでしょうか。
薬剤師国家試験と公務員試験は出題範囲や科目が違い、公務員試験を受験する時にはまた改めて勉強をしなければならないため、それだけ労力や時間が必要なことは簡単に想像できますよね。
しかし、国家公務員試験に合格すれば国家公務員として働けますので、努力のしがいがあると気合を入れる薬剤師もまた多くいます。
良い待遇を得るためには、それなりの努力が必要ですが、それを手に入れた時の達成感や満足感は努力をした分だけ大きくなります。
刑務所の薬剤師になってみたいと思った人は、あきらめずにチャレンジしてみてくださいね。
刑務所に勤務するときの注意
刑務所の薬剤師か高待遇で危険ではないことが分かり、「それなら挑戦して見よう」と思った人もいると思いますが、挑戦をする前に確認すべき事項がありますのでまとめてみました。
① 経験者でないと業務が進まない可能性がある
それぞれの刑務所で働く薬剤師の数はとても少なく、業務全般を一人でやらなければいけないことも多いため、ある程度の調剤経験がないと戸惑ってしまうことが多いかもしれません。
調剤薬局などに就職をすると普通は先輩薬剤師が仕事のやり方を丁寧に説明してくれますが、人数が少ない刑務所ではそれも期待できないということです。
このことから、特に新卒の薬剤師が勤務するのはかなり難しいことが予想されます。
このような事実を知ると就職することに不安を感じる人もいると思いますが、裏をかえせば経験のある薬剤師にとって刑務所は、今まで培ったスキルや知識を存分に活かせる職場ということでもあります。
受刑者の中には精神疾患を抱える人や、高齢者も多いため、そのような患者様に対する調剤を今までしてきた薬剤師は、特にその経験を役立てることができると思いますよ。
②職場移動がある
待遇が良いとされる国家公務員ですが、職場異動があるのも公務員の特徴の一つです。
だいたい3年を目安に職場が変わると思っていてください。
職場が変わることで新鮮な気持ちで働けると捉えられる人は問題ありませんが、慣れてきたところで長年勤務したい人は向かないかもしれません。
ただ一つ言えるのは、薬剤師はさまざまな場所を経験することにより成長する部分があるということです。
移動があることも成長する為の試練だと思うと乗り越えていきやすいですよ。
どの職種にも長所と短所が必ずありますから、転職する時は自分の性格と合わせてよく考えることが重要です。
刑務所の薬剤師のお給料はいくらくらい?
刑務所の薬剤師の収入は国家公務員の給与が適用され、 平均年収としては400万円から500万円くらいです。
安定した昇給や退職金も望める上に、残業もなしでこのお給料はかなり良い印象ではないでしょうか。
公務員は年功序列で実力主義ではないため、そのシステムが向かないという人も中にはいると思いますが、安定を第一に考える人にとってはとても条件が良いと言えますよね。
このような好条件を理由に、刑務所への転職を考える人も少なくないそうです。
刑務所の求人の探し方
それでは刑務所で働きたい場合求人はどのように見つければ良いかを見ていきましょう。
求人自体が少ないこともあり、ネットや広告では見たことのない人がほとんどだと思います。
刑務所の薬剤師の求人はハローワークで時々見られるのですが、いつも出ているわけではないので常にサイトをチェックしていないと見逃してしまう可能性も高いです。
それに「仕事をしながら募集を毎日チェックする時間なんてない」と言う人も多いのではないでしょうか。
その場合には転職エージェントの活用をお勧めします。
エージェントに無料登録しておくと担当者が常に最新の情報を入手し希望の求人をお知らせしてくれますので、仕事をしながらの転職活動がとてもスムーズに行きます。
転職エージェントには非公開求人があることから、私たちだけでは見つけることができない求人を紹介してくれたりもしますが、これもプロの転職エージェントを活用するメリットの一つです。
担当コンサルタントには、刑務所で働きたい旨と求人が入り次第情報をもらえるようお伝えておくといいと思います。
また、刑務所で働きたいという熱心なアピールも転職を成功させるポイントになりますよ。
まとめ
今回は、刑務所で働く薬剤師を見てきました。
あまり知られていない職業で、怖いイメージが先行しがちですが、実際には安全に働くことができ、待遇もかなり良いことが分かったのではないでしょうか。
薬剤師の役目は、病気の患者様を健康にするため、安全でかつ正確に薬を服用させることです。
それは一般の患者様だけでなく受刑者でも同じことが言えます。
目の前にいる病気の人を少しでも健康にしたいという気持ちさえあれば、刑務所での薬剤師業務はとてもやりがいのあるものになるに違いありません。
刑務所という場所のせいで転職を躊躇していた人もいるかもしれませんが、この記事が、刑務所に勤務することに対して偏見がなくなるきっかけになれば幸いです。
2020/03/18