漢方薬剤師になるための資格はあるの?漢方薬剤師のやりがい・仕事内容とは~
漢方薬剤師になって漢方専門薬局で漢方薬や生薬に携わりたいと思っている薬剤師は割と多いです。
ですがその一方で、漢方薬剤師になりたいとは思っていても、それを目指すことにかなり消極的になっている薬剤師も少なからずいるのではないでしょうか。
その背景には、実際にどのように漢方薬剤師になればよいのかがよく分からなかったり、漢方薬局の経験が今までなく自信がなかったりすることが考えられます。
経験がなくても漢方薬剤師になる方法があるのだとしたらぜひ知りたいところですよね。
今回は、漢方薬剤師のなりかたや資格、また収入や人気の理由について探っていきます。
Contents
漢方薬局で働く漢方薬剤師になるには資格が必要?
漢方薬剤師になるために必要な資格は、薬剤師の国家資格のみで、他の資格は必要ではありません。
薬剤師資格を持ち、漢方薬や生薬を扱う薬局に就職すれば、漢方薬剤師ということになります。
ここまで読んで、「なんだ、漢方薬剤師になるには漢方専門薬局を探して就職すればいいだけだから、簡単!」と思った人も中にはいますよね。
漢方専門薬局に転職する方法などは、また後の項目で説明をしますが、ここでは漢方薬剤師になるだけでなく、漢方薬剤師として「活躍する」ことを考えてみましょう。
薬剤師の資格だけでなく、漢方薬に対する十分な知識と経験も必要なことがなんとなく想像できたのではないでしょうか。
薬科大学では生薬の授業はありますが、他のほとんどの科目が西洋医学に基づいた教育のため、漢方薬局で活躍できる知識を持ち合わせていないと心配する薬剤師も実は意外といます。
漢方薬について勉強する機会があれば利用したいですよね。
その様な薬剤師にお勧めなのは、認定資格を目指すことで漢方の知識をつけるという方法です。
実は、漢方薬剤師の資格がないわけではありません。
漢方薬・生薬認定薬剤師という認定資格が存在しています。ただ、これは漢方薬剤師として働くための資格ではなく、漢方を勉強しましたよという証のような資格だと思ってください。
取得方法は、薬用植物園実習(1回)、講義研修会(9回・全45講演)によって成り立っている漢方薬・生薬研修会というものを受講して、終了後に行われる試験に合格することです。
漢方薬を勉強してきましたという自信にもなりますし、薬局への知識アピールにもつながると思いますので、興味のある方は取得してみると良いと思います。
ちなみに合格率は高く、比較的資格的取りやすい認定資格として知られています。
漢方薬局で働くことは難しい?
漢方薬剤師になるには、漢方薬局で働くことと前項でお話ししました。
「そうは言っても、漢方薬局の求人自体を見たことがない」という人も多いでしょうし、「経験なしで就職できるの?」と心配する人もいますよね。
漢方薬局は数が少ないのが現状で、その上人気が高いことも重なって転職が難しいというのが実際のところです。
では、漢方薬局に転職できる可能性を少しでも高くするにはどうしたらいいのでしょうか。
<漢方薬・生薬認定薬剤師の資格を取る>
先ほどお話しした認定資格を取得することで、転職の可能性が高くなるでしょう。
漢方薬に興味があり、資格を取るために勉強したということを履歴書内で示せるため、漢方薬局側に好印象を与えることが期待できますよ。
<漢方薬の勉強会に出席する>
インターネットや雑誌などで漢方薬の勉強会に積極的に出席することも転職の可能性を上げる良い方法です。
漢方薬の知識を身につけることもできますし、またその勉強会の会場で漢方薬局を経営している人や働いている人と顔見知りになることができ、予想外のコネクションを得られる可能性も高いと言えます。
そのコネクションが、転職する際に役立つこともありますので、勉強会がある時にはぜひ出席してみることをお勧めしたいです。
<転職エージェントに相談する>
漢方薬局に転職したいと転職エージェントに伝えて転職活動することも効果的な方法です。
転職エージェントは多くの求人を持っているため、漢方を専門とした薬局の求人を見つけられる可能性も高いことが予想されます。
また、転職のプロフェッショナルとして、どのようにすれば漢方薬局への転職を成功させられるかもよく知っていますので一度相談してみてください。
漢方薬剤師のお給料は高い?
人気が高い漢方薬剤師ですが、お給料はどのくらいなのでしょうか。
一般的な調剤薬局で働く薬剤師の平均年収が、450万円~550万円とされている中で、漢方薬剤師の年収は、約400万円と低めです。
ちょっとがっかりした人もいますよね。
しかし、それでも東洋医学を学んで患者さんにその知識を役立てたいという薬剤師にはとても人気な職業になっているのです。
漢方薬剤師の人気の理由
お給料が低めなのに人気な漢方薬剤師。
一体なぜだか知りたいと思う人も中にはいると思います。
この項目ではその理由について見ていきましょう。
<東洋医学を学べる>
西洋医学と東洋医学は全く違った考え方で薬を処方します。
例えば、西洋医学では、同じ病気を持つ患者さんには同じ作用を持つ薬を処方するのが普通ですよね。
それに対して東洋医学では、同じ病気でも体質や病因、病期などによって違う薬を処方することもあります。
今まで西洋医学を一生懸命学んできた薬剤師が、常識と思っていたことも東洋医学では通用しないことも実はめずらしくありません。
薬剤師になる人は好奇心の高い人がとても多いです。
東洋医学の気・血・水、陰陽、五行などを学んで、違う考え方を取り入れることで知識の幅を広げてみたいと思う薬剤師が多いのもうなずけますよね。
<不定愁訴を治療できる>
西洋医学は、検査などで体の悪いところを見つけてそれを取り除く治療法です。
即効性はありますが、原因が分からないと治療できないという欠点があります。
一方、東洋医学は体の全体を見て体の内側から治療する、または病気になる前に防ぐ治療法です。
そのため、原因が検査値に現れていなくても、体内のバランスを整えることで体の不調を治療することができます。
検査には出てこない、だけれども確実に体調は悪いと感じる――― たとえばめまいなどが良い例ではないでしょうか。
めまいは原因の分かっているものもありますが、いわゆる不定愁訴という原因不明のめまいも存在しています。
一日中めまいがして、働きにも行けない、買い物にも行けない、外に出ることさえ怖い、だけれど、薬を飲んでも治らないと悩んでいる人も意外と多いです。
その様な不定愁訴を訴える患者さんが、漢方薬に望みを託して漢方薬局を来局される場合があります。
病院で解決できなかった症状が、もし薬局で、薬剤師の力によって改善できたとしたら薬剤師としてこれほど嬉しいことはないですよね。
<薬剤師の技量で薬を提案できる>
漢方薬は、望診(肉眼での診療)、問診(既往歴や薬歴など)、聞診(患者さんの声や咳、臭いなど)、切診(脈診、腹診)をして漢方薬を選ぶのが通常です。
患者さんの状態を直接目で見たり、耳で聞いたりすることによって得られる情報すべてが、漢方薬を選ぶためのヒントになります。
普通の調剤薬局ですと、処方箋の通りに調剤することが基本ですので、薬剤師の技量で薬を提案したりはしませんよね。
その点、漢方薬局では、薬剤師の経験や知識、患者さんからの情報でベストと思われる漢方薬を自ら提案できるのです。
このようなことから薬剤師の知識が目に見えて役に立った、薬剤師の存在価値が上がったと感じる薬剤師もいるはずです。
<そもそも大量生産されている漢方薬に疑問>
普通の調剤薬局やドラッグストアでも漢方薬は取り扱っています。
有名企業が大量生産しているいわゆる医療用漢方製剤と言われているものです。
「処方箋なしで漢方薬を提案したいなら、ドラッグストアなどに就職して、販売されている漢方薬を一般の人に提案すればいい話なのでは?」という意見もありますよね。
実は、漢方薬を深く学んでいる薬剤師の中にはこの大量生産された漢方薬に疑問を抱いている人も少なくありません。
漢方薬の効き目は生薬を調合して煎じたものにあるのであって、工場で大量生産された漢方薬がどこまで同じ効果をだせるのかという疑問です。
また、やはりせっかく漢方薬剤師になるのなら医療用漢方製剤ではなく、生薬を取り扱うことのできる薬剤師になりたいという薬剤師も多くいます。
このような理由で、漢方専門薬局は、多くの薬剤師が働きたい人気の職場になっているのです。
まとめ
今回は、漢方薬剤師のなり方や転職の方法、収入や人気の理由について見てきました。
漢方薬剤師になるためにできる努力や漢方薬剤師としての仕事魅力などが少し分かっていただけたのではないでしょうか。
また、医療用漢方製剤ではない漢方薬を、漢方専門薬局で取り扱ってみたいと思った人も中にはいるかもしれません。
薬剤師が仕事をしていて一番嬉しいことは、患者さんのためになる仕事ができることです。
患者さんから「ありがとう。」と言っていただける仕事をすることです。
漢方薬剤師を目指している人は、患者さんが苦しんでいる症状を少しでも取り除いてあげられるような優秀な漢方薬剤師にぜひなってくださいね。