間違えずに早くピッキング(計数調剤)するコツは?薬剤師が解説します。
ヒートシールされた錠剤や、パッキングされた顆粒や散剤などの数を数えて調剤することを計数調剤と言います。
調剤薬局では、計数調剤という言葉よりもピッキングという言葉を使っていることの方が多いかもしれませんが、計数調剤もピッキングも同じ意味です。
さて、このピッキングの作業、調剤業務の中では一番頻繁に行うものなのですが、単純作業のためミスが起こる可能性がとても高くなっています。
現在では、薬剤師だけでなく調剤補助員もピッキング業務を行いますので、患者さんの安全性を守るためにも、今一度ピッキングのミスを減らすコツのようなものを共有することが必要なのではないでしょうか。
今回は、間違えずに早くピッキングするコツについてお話していきます。
Contents
ピッキングのコツ①処方箋に書かれている薬名は必ず最後まで読もう
ピッキングをする際に、まず最初に間違えるポイントは、処方箋に書いてある薬の名前を読み間違えてしまうということです。
ここで、間違えてしまうと後々の調剤でいくら気を付けていても正しい調剤ができませんので、処方箋に書いてある薬名は必ずしっかり最後まで読み、決して思い込みで読まないように注意してください。
薬局には似たような名前の薬が沢山あります。
以前、よく思い込みによる間違えの例として、アルマールとアマリールが挙げられましたが、実際にこれらの薬剤の取り違えで、患者さんが死亡してしまう医療事故が発生しました。
アマリールは血糖降下剤、アルマールは血圧降下剤です。
血圧を下げるために飲んだ薬が血糖降下剤だったら、患者さんにどのような悪影響を及ぼすかは容易に想像できますよね。
医療事故後、アルマールという名前は紛らわしく、医療事故を起こしやすいからと名称がアロチノロール塩酸塩錠「DSP」に変わりました。
しかし、薬局内には読み間違えをしやすい薬剤がまだまだあります。
処方箋の読み間違い、思い込みは、ピッキングの初心者よりは、慣れてきた人に多く起こるミスです。
いくら業務が忙しくても、ピッキング作業に慣れてきていても、流れ作業的に業務を進めるのではなく、注意力と緊張感を持って処方箋を読み込むことがとても重要だということはいつも頭の中に入れておいてください。
ピッキングのコツ②mg数を見ることを忘れないようにしよう
薬の名前をしっかり読んだら、mg数を必ずチェックしましょう。
薬の名前が合っていても、もしmg数を間違えて通常の倍の量を患者さんに渡してしまったら想像以上の副作用がでてしまったり、効果が出すぎて具合が悪くなってしまったりする恐れがあります。
逆に、少ないmg数のものを患者さんに渡してしまっても、薬の効果があらわれず、病状が悪化してしまいかねません。
このようなことから、正しい用量の薬を調剤することがとても大事だということが分かりますよね。
私は、一度薬をピッキングしたら、医薬品と処方箋を近づけて、医薬品に表示してあるmgと処方箋に書かれているmgが同じ数字かどうかを照らし合わせる作業をしています。
ピッキングした錠剤を処方箋の上に置けばすぐに確認できるので、時間もかからず万が一間違えたものをピックしてしまっても、すぐにそのミスに気付くことができますよ。
ピッキングのコツ③ピッキングで1錠の端数が出るときは必ず、2錠剤以上の端数でまとめよう
たとえば、一日1回の薬が31日で処方されている場合、普通に考えると10錠シートを3枚にハサミで1錠分を切り取ったシートを括り付けてピッキングしますよね。
これでも数はあっていますし、調剤として間違っているわけではないのですが、この端数である1錠がとても小さく無くなりやすいという問題点があります。
ピッキング時にきちんと調剤したつもりでも、監査時に端数の1錠がどこかに飛んで行ってしまったり、また投薬時に無くしてしまったり、もしくは患者さん自身が家に持ち帰って無くしてしまったりするかもしれないということです。
患者さんから薬が足りないと連絡があれば、結果的に調剤ミスになってしまいます。
自分と患者さんを守るために、端数が1錠になってしまったときには、端数を2錠以上にして括り付けるということをしてください。
どういうことかと言いますと、31錠を調剤するときは、2枚の10錠シート、1枚の8錠シート(10錠シートから2錠切り取ったもの)、3錠分切り取ったシートで調剤するという感じです。
こうすれば、端数の錠剤が1錠ではなくなり、いつのまにかどこかに行ってしまうリスクを下げることができます。
また、薬を効率的に調剤するためにも、1錠だけのシートを調剤棚に残さない工夫も必要です。
31錠を調剤する際に、2枚の10錠シートと1枚の9錠シート、2錠分切り取ったシートで調剤したとします。
端数の1錠を避けることができ、一見良い調剤に見えますが、9錠シートを作った際の残りの1錠が調剤棚に残ってしまいますよね。
1錠シートは調剤時に使われませんから、調剤棚に残ったまま古くなってしまい、結局破棄しなければいけない状態になりかねません。
調剤をするときは、目の前の処方箋の調剤のことだけでなく、後々のことも考えながら調剤することもとても大切です。
ピッキングのコツ④調剤かごには、調剤した薬を整理して入れよう
調剤する薬の種類が2、3種類と少なければ問題ないですが、中には調剤かごが溢れてしまうくらい薬の種類が多い患者さんもいます。
そのような処方箋を調剤することはとても大変なことですが、大変だからと言って、調剤した薬を何も考えずに調剤かごに山のように積んでしまうと、その調剤したものを監査するのもかなりの労力が必要なことが想像できますよね。
自分が監査をする立場であったときに、もし、調剤かごの中に薬が投げ入れてあるような状態で監査に回ってきたらということを考えてみてください。
監査する前にモチベーションが下がってしまい、そのせいでミスを見逃してしまう可能性も高くなってしまうのではないでしょうか。
そのようなことが起こさないためにも、調剤かごに薬を入れる際は、整理して入れるように努力しましょう。
できれば処方箋番号順に薬が並んでいると監査がよりしやすいです。
最近は、調剤補助員がピッキングをすることも多くなりました。
調剤補助員は監査業務はしないため、監査の立場に立ってピッキングするということがとても難しいとは思いますが、万が一ピッキングでミスを起こしてしまっても、監査でそのミスを見つけやすくするためには、監査の立場を考えながらピッキングすることがとても重要です。
きちんと整理しながらピッキングすることは、監査のためだけでなく、ピッキングする際の薬の見落としも無くす効果もありますから、ぜひ試してみてください。
ピッキングのコツ⑤調剤棚はきれいにしておこう
調剤棚というのは、薬の箱やアルミパッケージ、帯封などで、調剤しているうちにすぐに散らかってしまいます。
放っておいてゴミが調剤棚に山のようになり、挙句の果てに床にゴミが落ちてしまっているような職場を見たことがある人もいるのではないでしょうか。
調剤棚が散らかっているとミスの原因になります。
きちんと片付いている職場で仕事をする方が正確度が確実に上がりますから、調剤がひと段落ついた時点で必ずいらないごみは捨てる習慣をつけましょう。
調剤棚の上に小さなゴミ箱をところどころに設置しておくと便利ですよ。
ピッキングのコツ⑥できれば薬効を見ながら患者さんの症状を想像できるとなお良い
これは調剤補助員には難しいかもしれませんが、処方解析、つまり患者さんの病気を想像しながらピッキングするというのもミスを防ぐことにつながります。
たとえば、5日分の風邪薬が処方されている中にフロモックスという抗生物質が入っていたとして、それを利尿薬であるダイアモックスだと読み間違えてしまったらと仮定します。
処方されているものが風邪薬で、「あ、この患者さんは風邪なんだな。」ということを想像しながらピッキングをしていれば、ダイアモックスを撮った時点で、「なんで利尿剤が処方されているの?」と自分に問いかけることができ、「あ、フロモックスの間違えだ!」と自分のミスを直すことが期待できますよね。
このように、患者さんの症状をイメージすることで防げるミスもあるということは覚えておいてほしいポイントです。
まとめ
今回は、ピッキング(計数調剤)をする上で、ミスなく早くできるコツについてお話してきました。
いくつか紹介したコツの中に試してみたいものはありましたでしょうか。
ピッキングは、一見、数を数えるだけの単純で簡単な仕事のように見えます。
しかし、ほんの少しのミスが、患者さんに大きな健康被害を起こす可能性があるリスクの高い仕事でもあるということは、決して忘れてはいけないことです。
特にピッキング業務に携わる人は、気楽に行ってはいけない仕事であることをまず認識すること、そして、「薬剤師が監査してくれるから間違えてもいいや」などとは絶対に思わないようにしてください。
ピッキングでのミスを限りなくゼロに近づけて、患者さんの安全性を守ってほしいと思います。
2021/01/29